2024.08.15

遺留分侵害請求が認められた場合

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに

遺言内容に不服があり遺留分侵害請求を行っていた場合、請求が認められた時の手続きについてお困りではありませんか。

今回は、遺留分侵害請求とその後の申告手続きについて解説いたします。

遺留分侵害請求

遺留分とは

 亡くなった人(被相続人)の法定相続人に最低限保証される遺産の取り分のことです。

ただし兄弟姉妹には遺留分がありませんので、遺留分を主張できるのは、亡くなった人の配偶者、子、父母となります。

遺言や生前贈与による極端な財産の移転を阻止し、相続人の最低限の権利を守るために設けられた制度です。

 遺留分の額は、相続人の中に配偶者又は子がいる場合は法定相続分×1/2、相続人が父母のみの場合は法定相続分×1/3となります。

相続できる財産が遺留分よりも少ない場合、遺留分侵害請求を行うことにより、最低保証額である遺留分に相当する財産を取得することができます。

期限

遺留分を主張するためには、相続が開始したこと「及び」遺留分を侵害する遺贈や贈与などがあったことを知った日から1年以内に請求を行わなければなりません。

また、相続等の事実を全く知らなかったとしても、相続開始から10年経つと時効により請求権は消滅してしまいます。

遺留分侵害請求がなされた場合、まずは弁護士等を含め当事者同士で話し合い、解決しない場合は家庭裁判所へ調停を申し立て、それでも解決しない場合は提訴して裁判所の決定を待つことになります。

後者になればなるほど、各相続人等の取得財産の額が確定するまでに相当の期間を要することになります。

相続税の申告と納付

 相続税の申告と納付は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。この期限は、遺留分侵害請求があった場合でも変わりません。

遺留分侵害請求により申告期限までに話し合いがまとまらない場合でもまずは、遺言通りに遺産を分けたものとして相続税の申告と納税を行う必要があります。

これにより、未分割で申告した場合には適用できない小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減も使うことができます。

決定後の申告手続き

 相続税の申告期限後に遺留分の精算が行われた場合は、当然に取得財産が減った人と増えた人が存在します。

財産が減少した場合

 取得財産が減って納める相続税額が減った人(遺留分義務者)は、4か月以内に更正の請求を行うことにより納めすぎた税額が戻ってきます。

更正の請求は義務でありません。

話し合いにより、あらかじめ変動した税額を差引して遺留分の精算を行えば、更生の請求の手間を省略することができます。

財産が増加した場合

 上記にあるように、遺留分の精算と同時に相続税の精算が行われ更正の請求がなされていない場合は、取得する相続財産が増えた場合でも、相続税の申告・納付を改めて行う必要はありません。

ですが、遺留分義務者が更正の請求を行っている場合は、取得する財産と納める税額が増えた相続人(遺留分権利者)は、相続税の期限後申告(または修正申告)と納付を行う必要があります。

遺留分の精算という後発的事由によるため、延滞税や加算税は課されません。

税務署長の決定

遺留分義務者が更正の請求を行い、遺留分権利者が期限後申告又は修正申告をしなかった場合はどうなるのでしょう。

国としては徴収する税額が減ってしまいますので、税務署長による決定(または更正)が行われます。

この場合は、延滞税や加算税が課される可能性があります。

遺留分義務者による更正の請求がなされている場合は、遺留分権利者も期限後申告等を必ず行いましょう。

金銭以外での遺留分の精算

2019年7月以降の相続については、遺留分の精算は金銭で行うこととされています。しかし、金銭が準備できない場合などは、不動産や有価証券などの現物で行うことも認められています。

この場合、遺留分義務者は譲渡所得税の対象となります。特に不動産で遺留分の精算を行った場合には、多額の税金が発生する可能性がありますので、ぜひ専門家に事前にご相談ください。

おわりに

いかがでしたか?この記事では

  • 相続財産の遺留分
  • 遺留分精算後の申告手続き
  • 遺留分と譲渡所得

についてご説明いたしました。

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