目次
はじめに
誰かが亡くなり相続が始まるとき、まずはじめに考えなければいけないことは、相続するのかしないのか、相続するならどこまで相続するのかを考えなければなりません。
相続人の意思を尊重するため、民法では、単純承認・相続放棄・限定承認の3つの制度を設けています。
それぞれの方法には特徴がありますので、メリット・デメリットを把握した上で慎重に選択をする必要があります。
単純承認とは?
単純承認とは、すべての権利義務を相続するものです。
例えば、下記のような場合は単純承認したとみなされることになり、プラスの財産もマイナスの財産も相続することになります。
- 3ヶ月以内に相続放棄・限定承認の手続をしない(民法921条2号)
- 相続財産を処分する(同条1号)※1
- 相続財産を隠したり消費したりする場合(同条3号)
※1 処分するとは、例えば不動産の譲渡、家屋の取り壊し、預貯金を解約して自身名義に変更、株式の議決権の行使などを言います。
相続放棄とは?
相続放棄とは、価値のあるプラスの財産も借金などのマイナスの財産も引き継がないとすることです。
ちなみに相続放棄をする場合は、故人が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に(民法915条)、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出し(家事事件手続法201条5項)、相続放棄受理の審判を受けなければなりません(家事事件手続法39条、別表89項)。
メリット
- 借金などが多い場合、マイナス財産を一切引き継がなくていい
デメリット
- マイナスの財産を引き継がなくていい代わり、プラスの財産も引き継ぐことはできない
一度相続放棄をすると原則として撤回できないので、後で多額の財産が見つかったとしても相続することはできません。
※ 例外として詐欺又は強迫等があった場合 (民法96条)などは相続放棄という意思表示そのものを撤回することが可能です。
限定承認とは?
借入金などのマイナスの財産を限度として自宅などのプラスの財産を相続するものをいいます。
例えば次のようなパターンです。
プラスの財産 < マイナス財産
被相続人のプラスの財産を限度として被相続人のマイナスの財産を弁済し、残ったマイナスの財産は引き継がない。
プラスの財産 > マイナス財産
被相続人のプラスの財産で被相続人のマイナスの財産を弁済し、残ったプラスの財産は相続人が相続する。
限定承認のメリット
- 自宅などの不動産や株式を確保できる
マイナスの財産を弁済できなければ相続財産は換価処分されることになります。
※換価処分とは、簡単にいうと財産を売却して現金化することです。
不動産や株式に相当する金銭を支出できる場合、換価処分を免れ、これを手元に残すことが可能です。
- 先買権が利用できる(民法932但書)
先買権とは仮に相続した不動産が競売にかけられたときに、その不動産を優先的に購入する権利です。
限定承認をした相続人に認められます。
先買権を行使するために、家庭裁判所に対して鑑定人を選任してもらい、不動産の評価額を鑑定してもらう手続きをします。
限定承認のデメリット
- 相続人全員で行わなければならない
- 譲渡所得税が発生する
限定承認は、『みなし譲渡所得税』の発生に注意が必要です。
限定承認はプラスの財産の範囲に限りマイナスの財産を精算するという相続方法であり、その性質上、税務上は被相続人から相続人に資産が譲渡されたものとみなして課税されます。
そのため、準確定申告をする必要があり、単純承認に比べて手続きが煩雑になります。
限定承認を適用すべき人
- プラスの財産とマイナスの財産がどの程度あるかわからない方
- 自宅などのプラスの財産を受け継ぎたい方
借金が多いなどの理由で相続放棄をしてしまうと、自宅などのプラスの財産の権利を失うので受け継げなくなってしまいます。
しかし限定承認を行うと先買権の行使が可能となるため、評価額によって取得でき、受け継ぐことが出来ます。
- 相続財産に家宝がある方
相続放棄すると競売にかけられてしまいますが、限定承認の場合は先買権を行使できるため、評価額を支払うことで手元に残せます。
まとめ
本記事では3つの相続手法についてまとめさせていただきました。
限定承認は、一見すると便利に見えますが、実際の手続きは煩雑で利用が進んでいないのが現状です。
今後法整備が進み、手続き面が改正されるかもしれませんが、どの相続を選ぶのかは自分だけで判断するよりも、やはり税理士などの専門家にしっかりと相談することが重要です。
福岡相続テラス(税理士法人アーリークロス)では相続に関する無料相談を行っておりますので、お気軽にご連絡ください。
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