2022.01.11

胎児の相続能力

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに

奥様が妊娠中にご主人にご不幸があった場合、法定相続人は誰になるのかご存じでしょうか?

配偶者のご不幸は、残されたご家族の今後の生活に大きな影響を与えます。

まだお腹の中にいる我が子にも財産を相続させたいと考えるのは当然のことです。

そこで今回は、胎児がいる場合の相続についてご紹介いたします。

この記事を読めば、胎児に対する法律の見解と相続税申告の仕方をご理解いただくことができます。

胎児がいる場合の相続税申告についても触れていますので、妊娠中にご相続が発生した場合のご参考にしていただければと思います。

胎児の取り扱い

民法では、「私権の享有は,出生に始まる」と規定されています(民法3条1項)。

つまり、相続権を含めるさまざまな権利は出生によって始まるということです。

しかし、「胎児は,相続については,既に生まれたものとみなす」(民法886条1項)とも定められており、相続については胎児は既に生まれたものとみなされ相続人となります。

ただし、胎児が死産であったときにはこの例外は適用されません(同条2項)。

例えば

  • 被相続人:A
  • Aの配偶者(Aの子を妊娠中):B
  • Aの母親:C

上記の様な相続関係の場合、Aの法定相続人はBとお腹の中にいる胎児となります。

しかし、お腹の子が死産となった場合、Aの法定相続人はBとCになります。

相続税法上での規定

前項に対し相続税法上では、「(相続に関する胎児の権利能力)の規定により既に生まれたものとみなされる胎児がある場合で、相続税の申告書提出の時においてまだその胎児が生まれていないときは、その胎児がいないものとした場合における各相続人の相続分によって課税価格を計算することに取り扱うものとする」と定められています(相基通11の2‐3)。

つまり、胎児は相続人として認められますが、相続税申告の時にまだ生まれていない場合は、申告時での法定相続人の相続分によって税額の計算を行うという事です。

前項での相続関係の場合、相続税申告は配偶者Bと母親Cで課税価格を計算し、相続税申告を行うということになります。

ただし、胎児が生まれた後では相続人が変わるため、修正申告または更正の請求を行う事ができます。(相続税法第32条)

胎児がある場合の未成年者控除


相続人が未成年者の時は、未成年者控除として相続税の額から一定の金額を差し引きますが、 民法第886条に規定する胎児が生きて生まれた場合におけるその者の未成年者控除額は、200万円となります。

ただし、令和4年4月1日以後に相続又は遺贈により財産を取得する者につきましては、180万円となりますのでご注意ください。

申告期限の延長

相続税申告書提出の時に胎児が生まれていない場合においては、生まれてないものとみなして申告書を提出すると記しましたが、胎児が生まれたものとして相続税額を計算した場合に、相続税申告提出が不要となる時(基礎控除の増加、未成年者控除の適用)は、申請することにより、胎児の生まれた日以後2か月の範囲内で申告期限を延長することができます。

(通則法基本通達「徴収部関係の第11条関係の1(災害その他やむを得ない理由)の3」)に該当。

遺産分割について

では,実際の遺産分割はいつ行えばいいのでしょうか。

実務上,胎児が無事に出生した後に遺産分割を行うのが適切とされています。

胎児が生まれた後に相続人全員で遺産分割協議を行いますが、生まれてきた子には判断する能力がありません。

したがって、特別代理人を選任する必要があります。

生まれた子の親権者がその子の住所地の家庭裁判所へ特別代理人選任を請求し、選任後に遺産分割に参加してもらいます。

おわりに

今回は相続時に胎児がいる場合の相続についてお伝えしました。

実際に胎児が財産を取得できるのは出生後となりますが、相続税の申告には期限があります。

税務に関わる手続きは期限内に行い、財産分割に関する手続きは出世後に行いましょう。

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