2021.05.20

遺産分割中に新たな相続が発生した場合(数次相続)

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに

父親の死亡後、遺産分割が行われないうちに、年齢が近いことから母親も亡くなることは実際によくあります。

このような状況を数次相続(すうじそうぞく)といいますが、残された相続人はどうしたらよいのでしょうか。

この記事では、数次相続についてポイントをまとめ、気をつけるべきことについても言及いたします。

数次相続とは

被相続人が死亡した後、遺産分割協議をしないうちに相続人が死亡して次の相続が開始された状況のことを数次相続といいます。

数次相続の場合、遺産分割を行うことのできる地位が次の相続人に引き継がれることになります。

したがって一次相続の遺産分割協議には、二次相続の相続人も参加することになります。

  • 【事例1】
  • 一次相続の被相続人が父、相続人が配偶者である母と、子が2人いる場合

父の相続財産の遺産分割前に母が亡くなった場合、 一次相続では被相続人の配偶者である母と子2人が相続人となります。

その後母が亡くなった二次相続の際は子2人が相続人となります。

未分割である父の相続財産の遺産分割を子2人が母の立場として分割を行います。

その次に母の相続の遺産分割を行うという形です。

  • 【事例2】
  • 一次相続の被相続人が夫、相続人が配偶者と被相続人の母の場合

被相続人に子がいない場合を考えてみましょう。

一次相続の被相続人であるAさんの相続人は配偶者である妻と被相続人の母です。

Aさんの遺産分割中に、母が亡くなった場合、母の相続人はAさんの兄弟姉妹となります。

本来であればAさんの兄弟姉妹はAさんの相続人にはなりませんが、母が相続する予定だったAさんの相続分を兄弟姉妹で分けることができます。

そのため、Aさんの実質の相続人は配偶者である妻と、母の相続分を相続する兄弟姉妹となります。

Aさんの相続における遺産分割協議書に記載する共同相続人は一次相続の相続人と二次相続の相続人すべてです。

遺産分割協議について

遺産分割協議書は不動産などの所有権の移転登記をする際の必要書類でもあり、相続税申告にも添付書類として提出が必要です。

遺産分割協議書では冒頭部分に被相続人の氏名、生年月日、死亡年月日、住所、本籍地などを記載します。

数次相続の場合、一次相続の被相続人の次に二次相続の被相続人の氏名等を記載しますが、肩書を「相続人兼被相続人○○○」と記載します。

遺産分割協議書の最後に相続人の署名欄があります。

通常の肩書は「相続人」と記載しますが、二次相続で相続人となった場合、相続人としての地位が重複するため「相続人兼○○○の相続人」と記載します。

相続登記について

不動産登記では権利変動の過程を忠実に登記簿に反映させることを原則としていますので、数次相続の場合の相続登記でも、原則として、一次相続の相続登記をし、次に二次相続の相続登記をします。

その際、所有権移転の相続登記にかかる登録免許税はそれぞれの登記ごとに納付します。

しかし、数次相続において中間の相続人が一人である場合には、一回の申請でまとめて登記を行うことができます。

これを中間省略登記といい、登記費用を節約できます。

数次相続の場合の相続税申告の5つの注意点

①申告と納税義務が引き継がれる

申告義務のある人がその申告書を提出前に死亡した場合、その相続人が申告及び納税義務を引き継ぐことが相続税法により規定されています。

②相続税の申告期限が延長される

相続税の申告期限は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。

一方、提出義務者が提出期限前にその申告書を提出しないで死亡した場合、その相続人の申告期限は、提出義務者の死亡を知った日から10ヶ月以内に延長されます。

しかし延長されるのは死亡した相続人の申告期限のみであり、他の相続人の申告期限は延長されないので注意が必要です。

③基礎控除は増えない

相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。

法定相続人の数が増えると控除額も多くなりますが、数次相続の場合は、被相続人の相続が発生した時点での法定相続人の数で計算しますので基礎控除額が増えることはありません。

④相次相続控除が受けられる

相次相続控除とは、被相続人が相続開始前10年以内に相続等で取得した財産に相続税が課されていた場合には、その被相続人から財産を取得した人の相続税額から、一定の金額を控除する制度です。

数次相続においても、二次相続の際に一次相続で納めた相続税の一部を控除することができる場合があります。

⑤「配偶者の税額軽減」、「小規模宅地等の特例」の適用について

数次相続では、「配偶者の税額軽減」及び「小規模宅地等の特例」を考慮して遺産分割すると一次相続及び二次相続全体の相続税額を軽減することができます。

「配偶者の税額軽減」とは、被相続人の配偶者が相続した財産の価額が、1億6,000万円と配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額まで相続税がかからないという制度です。

また、「小規模宅地等の特例」とは、相続した事業の用や居住の用の宅地等について一定の要件に該当すればその評価額が一定割合で減額される制度です。

相続税の税額軽減のためには、一次相続及び二次相続の遺産分割についてきちんと試算をする必要がありますので相続税に強い税理士に相談することをお勧めします。

おわりに

遺産分割等がまとまらないなど数次相続は複雑になることもあります。

必ず相続専門の税理士に相談しましょう。

福岡相続テラス(税理士法人アーリークロス)では初回無料相談を1時間行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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