2023.09.26

相続における障害者控除とは?要件の確認と、注意点について

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに

相続が発生した際に、相続人の中に障害を持つ方がいれば、障害者控除として相続税を低くできる税額控除があります。

今回は相続税における、障害者控除の要件や注意点について、詳しくご説明します。

障害者控除の要件

要件

控除を受けられる人の要件は次の通りです。

4つ全てに当てはまっている場合は、控除が受けられます。

①法定相続人であること※
②相続又は遺贈により財産を取得したこと
③相続開始日に日本国内に住所があること
④相続開始日に障害者であること

※注意!
法定相続人、および「相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人」に該当しない障害者の方が、遺贈により財産を受け取る場合はこの控除は使えません。

「法定相続人にはならないが、障害を持つ親族の今後を考えて、財産を渡したい!」と思っている方はぜひ、特定贈与信託についてご検討ください。

こちらは、財産を渡す人(委託者)と財産を受け取る人(障害のある受託者)の家族関係は要件ではなく、祖父母孫、兄弟以外に他人でも制度を使うことが可能です。

また、この時信託できる財産は金銭のみならず、例えば収益不動産なども拠出が可能です。これにより安定して収益を生み出し、受益者の生活を継続支援することが可能になります。

▼リンク:相続テラスコラム 生前対策にもなる?障害を持つ家族への非課税贈与「特定贈与信託」とは
https://www.earlycross.co.jp/souzoku/seizentaisakunimonarushougaiwomotukazokuhenohikazeizouyotokuteizouyoshintakutoha/#i-2

特別障害者と一般障害者

障害の程度により、控除額は変わってきます。

相続税の障害者控除では、適用できる方は次の2つに分けられます。

それぞれの定義について詳しくは相続税法基本通達をご確認下さい。

  • 一般障害者

知的障害者のうち重度と判定された者以外・精神障害者保険福祉手帳2級3級・身体者障害手帳3級~6級 等
▼リンク:国税庁HP 一般障害者の範囲/相続税法基本通達19の4-1
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/08.htm#a-19_4_1

  • 特別障害者

知的障害者のうち重度と判定されたもの・精神障害者保険福祉手帳1級・身体障害者手帳1級2級 等
▼ リンク:国税庁HP 特別障害者の範囲/相続税法基本通達19の4-2
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/08.htm#a-19_4_2

控除の適用について、障害者手帳がないと控除が使えない…というわけではありません。

該当の障害者手帳所持者以外にも、 年齢65歳以上の方で、上記障害者に準ずるものとして市町村、特別区の区長または福祉事務所長等の認定を受けている方等も対象になります。

障害者控除額の計算方法

控除額の計算式は次の通りです。

  • 一般障害者の場合

(85歳-相続開始時点の年齢)×10万円

  • 特別障害者の場合

(85歳-相続開始時点の年齢)×20万円
※相続開始時点の年齢では、端数の月数は切り上げられます。(39歳9か月→40歳として計算する)

なお相続の時に、兄弟相続で2割加算の対象である場合は税額に2割加算された金額から、障害者控除を計算することができます。

一般障害者の場合の計算例

  • 例1:本来の税額が500万。40歳の一般障害者(被相続人との関係性:子)

控除される額:(85歳-40歳)×10万円=450万円
550万-450万=10万
最終的な税額:10万

  • 例2:本来の税額が500万。40歳の一般障害者(被相続人との関係性:兄弟)

加算される額:500万×20%=100万
控除される額:(85歳-40歳)×10万円=450万円
500万+100万-450万=150万
最終的な税額:150万

特別障害者の場合の計算例

  • 例1:本来の税額が500万。40歳の特別障害者(被相続人との関係性:子)

控除される額:(85歳-40歳)×20万円=900万円
500万-900万=マイナス400万
最終的な税額:0(マイナスになることで還付などはありません)

  • 例2:本来の税額が500万。40歳の特別障害者(被相続人との関係性:兄弟)

加算される額:500万×20%=100万
控除される額:(85歳-40歳)×20万円=900万円
500万+100万-900万=マイナス300万
最終的な税額:0

扶養義務者の税額から控除ができる

障害者控除を使ったところ、障害のある相続人の税額をゼロにしてもまだ控除額の全額を引き切れないことがあります。

この場合、ほかの相続人のうち扶養義務者の相続税額から控除します。

対応できる相続人の範囲

扶養義務者とは、
配偶者・親・子・兄弟姉妹・三親等内の親族※
※三親等内の親族は、家庭裁判所の審判を受けたもの、または生計を一にする者が該当します

▼リンク:国税庁HP 相続税法基本通達1の2-1
扶養義務者の意義:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/01/00.htm

ここでほかの相続人に控除枠を適用させて、相続税申告における税額が0になった場合、相続税申告は不要です。

ただし、小規模宅地等の特例や、配偶者の税額軽減を適用の上で税額が0になっている場合は、申告が必要ですので注意しましょう。

注意!障害者控除の枠を持ったまま、2回目の相続が発生した場合

すでに障害者控除を受けたことがある者であるときは、ふたたび控除を受けようとするときの控除限度額は、前(最初)の相続の際の控除限度額から既に控除を受けた額の合計額を控除した残額の範囲内に限られます。

つまり、1回目の相続で500万ある控除枠の内、本人が200万、扶養義務者が200万控除した場合、2回目の相続での控除枠は100万=500万-(200万+200万)です。

ただし、1回目の相続の時に一般障害者に該当して控除を受け、2回目の相続で特別障害者に該当する場合の控除額の計算方法は次のように規定されています。

{20万円×(85歳-2回目の年齢)+10万円×(2回目の年齢-1回目の年齢)}-(1回目の時に障害者控除を受けた合計額)

おわりに

いかがでしたか?この記事では

  • 障害者控除の要件
  • 扶養義務者の税額からの控除
  • 2回目の相続における注意点と、控除枠の計算

についてご説明いたしました。

なお、障害のある方が相続人になるとわかっているときは、遺言書の作成や生前贈与、非課税信託の活用などが非常に有効になってきます。

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