目次
はじめに
令和6年4月1日より「相続登記の義務化」が始まり、違反すると10万円以下の過料が科されるなど、ニュースで見聞きした方も多いのではないでしょうか?
では、相続の際に、遺産分割協議がまとまらず(誰が不動産を相続するか決まらず)、相続登記ができない場合はどうしたら良いのでしょうか?
そのような場合でも、10万円以下の過料が科されてしまうのでしょうか?
今回のコラムでは、上記のような理由により相続登記ができない場合に、相続登記の申請義務を履行したものとみなす、新しい制度「相続人申告登記制度」についてご説明いたします。
※「相続登記の義務化」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
▼先代・先々代名義の土地の名義変更について(相続登記の義務化)
https://www.earlycross.co.jp/souzoku/sendaisensendaimeiginototinomeigihenkou/
「相続人申告登記制度」(改正不動産登記法第76条の3)とは?
「相続人申告登記制度」とは、相続人の方が「自分が相続人であること」を法務局に申し出ることにより、その申し出をした者については相続登記の申請義務を履行したものとみなす制度です。
複数の相続人がいて、相続登記の申請義務の履行期限(3年以内)に遺産分割協議がまとまらなかった場合でも、
単独で申し出ることが可能です。(自分の分だけではなく、他の相続人の分の代理申し出も可能です。)
「相続登記の義務化」と同日の、令和6年4月1日から施行されます。
例えば、財産の分け方で揉めていて、遺産分割協議が3年を超えそうな場合に、ひとまず「相続人申告登記」の申し出をしておけば、
相続登記の申請義務を満たしたことになり、10万円以下の過料は科されません。
これまでも、遺産分割協議がまとまっていない場合に、相続登記をする方法はありました。
ただ、その場合には、法定相続分で相続登記をする必要があり、法定相続人の範囲や法定相続分の割合を確定する必要があったため、
戸籍の収集などの手続きの負担が大きく、相続登記をしないでそのままになっている方も多くいらっしゃいました。
今回の「相続人申告登記制度」では、法定相続人の範囲や法定相続分の割合の確定をする必要がなく、かつ、従前どおり遺産分割協議も不要なため、
手続きの負担が少なく、簡単な方法で申し出ができるようになります。(登記簿には、住所・氏名が記載され、持ち分は記載されません)
「相続人申告登記制度」について、さらに詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
▼法務省HP「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」
https://www.moj.go.jp/content/001401146.pdf
「相続人申告登記制度」の具体的な申請方法は?
では、次に「相続人申告登記制度」の具体的な申請方法について見ていきましょう。
申請方法
以下の2点を所有不動産の管轄の法務局に申し出ます。
- 所有権の登記名義人について相続が開始した旨
- 自らがその相続人である旨
※申し出の際の書類の、正式な様式については、現時点(令和5年9月現在)ではまだ発表されていませんが、今後明らかになっていくと思われます。
添付書面
- 「被相続人の相続人であることがわかる戸籍謄本」のみ
手数料
- 「被相続人の相続人であることがわかる戸籍謄本」の取得手数料
- 相続登記の登録免許税は必要無し
⇒「相続人申告登記制度」は、「法務局の登記官の職権で登記を行う」という扱いになりますので、この時点では登録免許税はかかりません。
注意点
「相続人申告登記制度」は、とても便利な制度ではあるのですが、注意点もございます。
- 複数の相続人がいる場合は、自分ひとりだけ「相続人申告登記」の申し出を行っても、他の相続人は「相続人申告登記」をしたことにならず、申し出を行っていない相続人は過料を科される可能性がある
⇒それぞれの相続人が各自で「相続人申告登記」の申し出を行う必要があります。
または、一人の相続人が「相続人申告登記」の申し出を行う際に、他の相続人の分の代理申し出を行う方法でも大丈夫です。
- 登記簿に、「相続人申告登記」の申し出をした相続人の住所・氏名が記載されてしまう
⇒後に遺産分割協議が調って、その不動産を取得しないことが決定したとしても、申し出の段階で記載されてしまいます。
- 後に遺産分割協議が調った場合には、遺産分割成立の日から3年以内に、相続登記の申請を行う必要がある
⇒この場合、通常の相続登記と同様の資料(被相続人の出生~死亡までの戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本等)の提出や登録免許税の支払いが必要になります。
※この制度は、あくまで申し出た相続人の住所・氏名が付記されるに過ぎず、相続による所有権の移転登記がなされるものではありません。ご注意ください。
参考:その他の不動産登記に関する改正について
今回ご紹介した「相続人申告登記制度」以外にも、昨今、不動産登記に関する改正が、頻繁に行われています。
参考までに、以下に簡単なご説明と施行日を掲載いたします。
相続土地国庫帰属制度(令和5年4月27日施行)
相続又は遺贈により取得した土地を手放し、国庫に帰属させることができる制度です。
ただ、要件が厳しいため、実際に利用するのはなかなか難しい制度でもあります。
なお、「相続土地国庫帰属制度」については、以前のコラムでもご紹介しています。参考までにこちらの記事もご覧ください。
▼相続土地国庫帰属制度と相続放棄
https://www.earlycross.co.jp/souzoku/souzokutotikokkokizokuseidotosouzokuhouki/
DV被害者等の保護のための登記事項証明書等の記載事項の特例(令和6年4月1日施行)
DVの被害者の方など、住所が知られると危険が及ぶ方については、登記事項証明書等を発行する際に現住所に代わる住所(委任を受けた弁護士等の事務所・支援団体等の住所・法務局の住所等)を記載することができる制度です。
これまでも、DVの被害者の方などの住所の閲覧を制限する取り扱いは行われていましたが、相続登記の義務化の開始に伴い、法制化されることになりました。
相続登記をする必要があるけれど、登記事項証明書に自分の住所が記載されると危険が…。という方は、こちらの特例制度を利用すると良いです。
所有不動産記録証明制度(令和8年2月2日施行)
被相続人が所有している全国の不動産をリスト化して証明する制度です。
現在は、被相続人が所有している全国の不動産を一覧で見ることができる仕組みが存在していないため、被相続人が所有している全ての不動産を把握しきれず、そのまま放置されてしまう不動産があることが問題でした。
この制度が始まると、被相続人が所有している全国の不動産を一覧で見ることができるようになり、不動産の見落としを防ぐとこができるようになります。
住所変更登記等の申請の義務化(令和8年4月1日施行)
不動産の所有者が、住所等を変更した場合、変更日から2年以内に住所変更登記の申請をしなければいけなくなります。
正当な理由なく申請を怠った場合には、5万円以下の過料が科されます。
転勤や引っ越し等で住所を変更した際に、毎回、住所変更登記の申請をする必要が出てくるため、負担になりそうです。
おわりに
いかがでしたか?今回のコラムでは
- 相続人申告登記制度
についてご説明いたしました。
遺産分割協議が調っていなくても、簡易的に相続登記の申請義務を満たすことができる制度です。
遺産分割協議が長引いてしまう場合には、この「相続人申告登記制度」を利用して申し出をしておくと、10万円以下の過料は科されないことがお分かりいただけたかと思います。
相続や相続登記でお困りごとがございましたら、お気軽に福岡相続テラス(税理士法人アーリークロス)にご相談下さい。
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