目次
はじめに
相続が発生したが、相続人の中に行方不明や音信不通の方がいる・・
このような場合、相続手続きをすすめることができません。
なぜなら、遺産分割協議は相続人全員が参加し合意しなければならないからです。
遺産分割協議が成立しないことには、銀行預金の解約手続きや不動産の処分を行うことができません。
相続税の申告、納税手続きについては、遺産分割協議を行わないまま、行方不明者以外の相続人が民法上の法定相続分で相続したものと仮定して行います。
しかしこの場合は、相続税法上の特例である、小規模宅地の特例や、配偶者の税額軽減の適用はされないこととなります。
今回は、法定相続人の中に行方不明の方がいる場合の手続きについて解説いたします。
失踪宣告と不在者財産管理人について
相続人の中に行方不明の方がいる場合の銀行預金の解約手続きや不動産の処分を行う手段として、失踪宣告の制度と不在者財産管理人制度があります。
失踪宣告とは
失踪宣告とは、生死不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。
生死が7年間明らかでないときの普通失踪と、船舶の沈没、戦争、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った時から1年間生死が明らかでないときの特別失踪の2つがあります。
普通失踪は生死不明から7年が経過したとき、危険失踪は危難が去ったときに死亡したとみなされます。
手続きについて
利害関係者(不在者の配偶者,相続人にあたる者,財産管理人,受遺者など失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者)が、不在者の従来の住所地の家庭裁判所に申し立てを行います。
一般的には、失踪宣告の審判確定までは半年から1年ほどかかるといわれています。
申立費用は収入印紙800円、家庭裁判所との連絡の切手代、官報公告料4,816円がかかります。(戸籍取得費用も別途必要です)
失踪宣告されるとどうなるか
死亡したとみなされるので、不在者に相続人がいる場合はその相続人が代襲相続人となります。
したがって代襲相続人が被相続人の財産を相続する権利を持ちます。
不在者財産管理人とは
上記で解説した失踪宣告は、普通失踪の場合は7年というかなりの期間を要してしまいます。
行方不明になってから7年に満たない場合は、不在者財産管理人という制度を検討されてもよいでしょう。
不在者財産管理人とは、従来の住所を去り容易に戻る見込みがない者に財産管理人がいない場合に認められる制度です。
行方不明の期間については、失踪宣告のように期間が定められているのではなく、事例ごとに判断されます。
不在者財産管理人の権限は民法103条により定められており、
『保存行為』と『管理行為』のみ権限を有しています。
例えば、不動産の家屋の修繕であったり、固定資産税の支払等が保存行為に該当します。
相続手続きに必要な、遺産分割協議の同意や不動産の処分等は、『処分行為』となります。処分行為は権限外行為に該当するため、不在者財産管理人は単独で行うことはできません。
よって、家庭裁判所に「権限外行為の許可の申立て」をして許可を得る必要があります。
家庭裁判所から権限外行為の許可の審判がおりると、不在者に代わって遺産分割協議に参加し、不動産の売却等を行うことができます。
手続きについて
利害関係者(不在者の配偶者,相続人にあたる者,債権者など)が、不在者の従来の住所地の家庭裁判所に申し立てを行います。財産管理人に選任される者は、特別な資格は必要ありませんが、通常不在者との関係や、共同相続人の利害関係の有無などを考慮されます。場合によっては、弁護士や司法書士などの専門職が選任されることも多いようです。
一般的には、申立てを行ってから審判確定までは約2~3ヶ月かかるようです。
費用については、収入印紙800円、家庭裁判所との連絡の切手代に加え、不在者財産管理の管理費用や不在者財産管理人の報酬として、予納金がかかる場合があります。
不在者財産管理人が選任されたらどうなるか
不在者財産管理人は、家庭裁判所の許可を得たうえで遺産分割協議に参加することとなります。
税法上、不在者財産管理人の申告納税義務等および手続きにかかる規定はありませんが、
不在者財産管理人は、家庭裁判所に選任されると財産管理に必要な限度で不在者の財産関係についての法律行為を行う機能を有するものとされていますので、法定代理人と解されています。
したがって不在者財産管理人が提出した相続税の申告書については、適法な申告書として取り扱って差し支えないものとされているようです。
不在者財産管理人は遺産分割が終わっても職務は終了しません。
任務が終了するのは以下の3種類のいずれかに当てはまる場合です。
- 不在者が現れたとき
- 不在者の死亡が確認されたとき
- 不在者の失踪宣告が行われたとき
不在者財産管理人に専門職が選任された場合は、任務終了まで財産管理費用の負担が継続する可能性もあります。
相続人の中に行方不明の方がいる場合に事前にできること
相続人の中に行方不明の方がいる場合でも、失踪宣告や不在者財産管理人の制度を活用することで、遺産分割協議を成立させることはできます。
しかし、上記で解説した通りどちらも裁判手続きが必要となり、費用や時間がかかることとなってしまいます。遺された相続人の方の心身の負担も計り知れません。
スムーズに相続手続きを行うために事前にできることはあるのでしょうか?
遺言書又は民事信託を活用
法的に有効な遺言があれば、遺言書に記載されたとおりに相続手続きを進めることができますので、遺産分割協議を行う必要がなくなります。
また遺言書の形式は、公証役場において公証人が遺言の内容を確認したうえで証人による立ち会いのもと作成される「公正証書遺言」が望ましいです。
自身で作成する「自筆証書遺言」だと、記載方法など要件を満たしていない場合は、無効となる恐れがあるからです。また「自筆証書遺言」は相続開始後、家庭裁判所での検認が必要となります。(法務局にて保管する場合は検認不要です)
推定相続人の中に、行方不明者がいる場合は元気なうちから遺言書の作成を検討したほうが良いでしょう。
なお、民事信託も設計の仕方によっては同様の効果を期待できます。
民事信託の活用については以下をご覧ください。
おわりに
いかがでしたか?
この記事では【相続人の中に行方不明の方がいる場合の手続き】について解説いたしました。
税理士法人アーリークロスでは、様々な専門家等と連携しておりますので相続に関することはトータルでサポートを行います。
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