目次
はじめに
相続人間で争いがあり、共同して相続税申告が作れない状況でお悩みではないですか?
この記事でご紹介する注意点を前提に申告書の作成を進めることで解決できます。
なぜなら、相続税申告は単独でも行うことができるからです。
この記事では、相続税申告を共同で提出しない場合の注意点をご紹介します。
この記事を読み終えると、相続人全員で提出しない場合の相続税申告書の提出上の注意点をご理解いただくことができます。
相続税申告書は単独提出も可能
相続人全員で相続税申告書を作るかどうかは任意となっています
相続税法27条では、相続税の申告書について規定されています。
第5項に、相続税申告書の共同提出について規定されていますが、これはいわゆる「できる」規定となっています。
相続税法第27条⑤
同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者で申告書を提出すべきものが2人以上ある場合において、申告書の提出先の税務署長が同一であるときは、これらの者は、申告書を共同して提出することができる。
(一部抜粋)
つまり、各相続人がそれぞれ単独で提出することが原則です。
単独提出は禁止されていませんので、それぞれ別々に相続税申告書を作成し提出することもできます。
相続人間の情報格差が生じる影響
同居している相続人と、別居している相続人とでは被相続人に関する情報の格差がどうしても生じてしまいます。
相続人間で協力せず、それぞれ単独で相続税申告書を提出する場合には、この情報格差が様々な影響を及ぼします。
その例を見てみましょう。
他の相続人にされた贈与が相続税に持戻される場合
以下の贈与は相続税の課税対象となります。
したがって、申告書を作成するときに加味しなければいけません。
なお、贈与をうけていない他の相続人の相続税も増額しますので注意が必要です。
- 相続開始前7年以内の贈与
- 相続時精算課税贈与
各相続人が把握している財産内容が違う場合
「◯◯銀行に口座を開設していた」や「◯◯証券の◯◯さんがよく自宅に訪問してくれていた」等の情報は同居している相続人のほうがよく情報を把握しています。
そのため、別居している相続人にはこれらの情報がとても少ないです。財産把握をすることが困難になります。
また、固定資産税の課税明細も、所有者の自宅に送付されるため、別居している相続人はこれらの資料にふれる機会が少なく、財産を把握することを一層困難にします。
実は遺言書が存在していた場合
自筆証書遺言や公正証書遺言など、これら「遺言書」といわれるものは「紙」で保管されています。
被相続人が大切なものをどこに保管しているかを把握していないと見つけることは容易ではありません。
また、親が子に遺言書があることを伝えていればよいのですが、そうでない場合は発見をより一層困難にします。
同居している相続人であればこれらの情報を把握しているケースが多いです。
なお、自筆証書遺言があった場合において、同居相続人において不利な内容になっているにも関わらず、これをよく思わない人が破り捨ててしまうケース等も考えられます。
別居している他の相続人は終ぞ知ることなく、遺産分割協議になってしまうケースもあるのではないでしょうか。
公正証書遺言であればこの問題は解決されます。詳しくは下記をご覧ください。
相続税の障がい者控除や未成年者控除
他の相続人が障がい者控除を適用し納付税額が0円になる場合があります。
こういった場合、障がい者控除の枠が余ると、他の相続人(正確には扶養義務者)において控除することができますが、その控除額は協議によって決めることとなります。
協議ができない場合には、算出税額按分で計算することとなります。
細かい論点ですが、納付税額に影響を及ぼします。
また、他の相続人が「あえて障がい者手帳の交付を受けていない場合」において、一定要件を満たせば障がい者控除の適用を受けることができます。
遺産相続争いが起きているケースにおいては、こういった情報を全員で共有することは難しいでしょう。
単独で相続税申告を行う上で正確な申告書を作成するための対策
他の相続人にされた贈与を調べる方法
他の相続人にされた贈与を調べる有効手段として以下の方法が考えられます。
- 被相続人の金融機関での取引履歴を取り寄せて資金移動を調査する
- 相続税法49条に基づく開示請求をする
- 弁護士に依頼し調査してもらう
他の相続人が相続放棄をしたときの影響
相続放棄したことは、他の相続人に通知されません
相続放棄が受理されたことを通知する文書は、放棄した人にしか送付されません。
そのため、他の相続人は相続放棄があったかどうかをリアルタイムに知ることはできないため、瞬間的に情報格差が生じます。
財産が未分割の場合は更に複雑になります
相続放棄があったことを知らずに未分割に基づく相続税申告を計算すると誤った計算結果となるおそれがあります。
非課税や相続税の計算自体への影響はないのでしょうか?
相続の放棄が合った場合においても、相続税自体は相続が変わらないような構造になっています。
具体的には以下の内容は相続放棄の影響を受けません。
- 配偶者に対する相続税額の軽減(相続税法19条の2)
- 法定相続人の数に紐づく生命保険金等又は退職手当金等の相続税の非課税限度額、遺産にかかる基礎控除、相続税の総額計算方法など
- 相続放棄をしていても葬儀費用を負担している場合には債務控除ができます。
反対に以下の内容は相続税へ影響を及ぼします。
- 相続税額の加算
- 生命保険金等又は退職手当金等の相続税の非課税(相続税法12)の適用要件
- 債務控除(葬儀費用を除く)
- 立木の評価減額が使えない
おわりに
いかがでしたか?この記事では相続人同士で共同して相続税申告を作成せず、単独で作成する場合の留意点と
・相続税申告書は単独提出も可能
・相続人間の情報格差が生じ相続税申告書作成に影響
・単独で相続税申告を行う上で正確な申告書を作成するための対策
・他の相続人が相続放棄をしたときの影響
についてご説明いたしました。
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