2021.11.01

申告を忘れた場合ー加算税、延滞税にご注意くださいー

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに

相続税の申告をしていない場合、このまま放っておいて良いのか、それとも急いで申告した方が良いのか分からず、悩んでいませんか。

この記事では、申告書の提出を忘れていて、申告期限を過ぎてしまい、後日申告書を提出した場合にかかる加算税、延滞税についてご説明します。

期限を過ぎてからの申告には、本来の税額以外に加算税と延滞税がかかります。

加算税の中でも、申告書の提出を忘れていた場合には無申告加算税がかかります。

また、無申告加算税の中でも、税務署から指摘される前に申告書を提出する場合と、指摘を受けてから提出する場合では加算税の率が違います。

心あたりがある方は早急に申告書を提出することをおすすめします。

この記事では、相続税申告書の提出を忘れていた場合にかかる加算税と延滞税についてご説明します。

この記事をご参考に、相続税申告書の提出を忘れていた場合は、急いで申告書を提出することを検討してみてください。

相続税申告書の提出を忘れていた場合とは?

「申告書を提出しなければならない者が、提出期限までに申告書を提出しなかった場合」を言います。

申告書を提出しなければならない者とは

遺産の総額(課税価格の合計額)が遺産にかかる基礎控除額を超える場合において、配偶者の税額軽減の規定の適用がないものとして相続税額の計算を行ったときに、納付すべき税額が算出される相続人または受遺者のことをいいます(相法27①、相基通27-1)。

提出期限とは

その相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内をさします(相法27①)

期限後申告の内容の違い

納税者は期限後申告書を提出することができる(通則法18)

このことにより、期限を過ぎていた場合でも決定があるまでは、期限後申告書を税務署へ提出することが出来ます。

税務署長は、その職権により決定処分をすることができる(通則法25)

このことにより、税務署長は、納税申告書を提出する必要があると認められる者が申告書を提出しなかった場合は、調査により課税標準等及び税額等を決定します。

同じ期限後申告でも、上記1.2.のようにその期限後申告書の内容の違いにより、加算税が違ってきますので、ご注意ください。

加算税の違い

自主期限後申告の場合

(1)納付すべき税額の5%(通則法66⑥)
(2)税務署より調査が行われることの通知があった後において、調査が行われるまでの間に申告書を提出した場合は、納付すべき税額が50万円までは10%、50万円を超える場合、その超える部分については15%(通則法66①一、二)
(3)期限内申告書を提出する意思があったと認められる一定の要件に該当し、かつ法定申告期限から1月を経過する日までに提出された場合0%(通則法66⑦)

  • 【例】
  • 期限後申告による本税額 1,120,000円
  • 加算税額 (1)の場合 1,120,000円✕5%=56,000円
  • (2)の場合 50万円✕10%+(1,120,000-500,000)✕15%=143,000円

税務署の調査等により期限後申告書を提出した場合

納付すべき税額の15%(通則法66一)。また、納付すべき税額が50万円を超える場合、その超える部分については20%(通則法66二)

  • 【例】
  • 期限後申告による本税額 1,120,000円
  • 加算税額 500,000✕15%+(1,120,000-500,000)✕20%=199,000円

いかがですか?

同じ期限後申告書、同じ本税額でも、加算税は56,000円、143,000円、199,000円と全く変わります。

自主的な期限後申告書を提出した方が加算税は断然安くなることがおわかりになるかと思います。

さらに延滞税※も掛かりますので、税負担はかなり重くなります。

※具体的な計算方法につきましては、複雑となりますので、国税庁HP「延滞税の計算方法」をご覧ください。

いつまで申告書は提出できる?

過去の申告書の提出を忘れていた場合であっても、期間の制限があります。

つまり、何十年も過去の申告書を提出することは出来ません。

また、税務署から課税することも出来ません。

申告書が提出できる期間、税務署から課税できる期間には制限があります。

国税債権に関する期間制限については、賦課権及び徴収権が原則5年(通則法70、72①)と定められています。

しかし、偽りその他不正行為による場合は7年(通則法70④)となるので注意が必要です。

つまり、最大7年間は税務調査がある可能性があります。

基本的に相続税の税務調査は、相続開始後2年目を目処に行われます。

税務署からの「相続税申告のお尋ね」を返送せずそのままにしておかれた事が後日税務調査において、相続税申告書提出の必要を知っていたのに提出しなかったと認定されることもあります。

最大7年間も心配しなければならないリスク、その結果、税務調査があってから後悔しても遅いリスクは大きいと思います。

その後、遺産分割協議をしなければならないなど、精神的な負担も大きくなります。

また、本来納付すべきであった本税のほか、前出したような加算税、さらには延滞税が賦課されますので、お心あたりがある場合は、一度ご相談ください。

おわりに

いかがでしたか?

この記事では、相続税申告書を提出しなければいけなかった方がその提出を忘れていた場合に、かかる加算税と延滞税の違いを説明しました。

期限を過ぎた後に申告書を提出した場合は、加算税と延滞税がかかりますが、提出の仕方によっては随分金額が違いますので、急いで提出した方が良いかを検討しましょう。

また、コロナを原因に提出することが出来なかった場合には、「期限延長申請書」を申告書と一緒に提出すれば、期限後申告が認められる場合もあります。

つまり、加算税と延滞税がかからない場合があります。

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