2023.09.06

親族間で著しく低い価額で財産を譲り受けた場合の課税

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに

 親族間や同族法人との間で不動産を譲渡や贈与をお考えではありませんか?

 一般的に有償で不動産を譲り渡せば譲渡所得が課税され、無償で不動産を譲り受ければ贈与税が課税されます。

 それでは、「通常取引される金額より低い金額で譲り渡せば、譲渡所得の課税は免れるし、無償じゃないから贈与税は関係ない。」となるのでしょうか?実はそうではありません。
 
 この記事では、親族間や自身が役員となっている同族法人などの特殊関係人が著しく低い価額で財産を譲り受けた場合(以下「低額譲受」といいます。)の課税についてご説明します。

前提

 低額譲受とは、親族間などで需要と供給を無視した価格設定又は自由に価格設定ができる状態で、通常の取引(第三者同士)ではありえない著しく低い金額での財産の移転のことを言います。

<登場人物>
・父A
・子B(父Aの子)
・同族法人C(父Aが代表取締役、1万株発行済み、7,000株は父A、3,000株は子Bが保有)
・同族法人D(父Aが代表取締役、1万株発行済み、7,000株は父A、3,000株は子Bが保有)

個人から個人への低額譲受の場合

例)父Aが所有の時価1,000万円の土地を子Bに400万円で譲渡した場合

①財産を譲り渡した父Aの課税
 土地を400万円で譲渡したとしてキャピタルゲイン(値上がり益)が生じる場合には、譲渡所得の確定申告が必要になります。

②財産を譲り受けた子Bの課税
 時価1,000万円の土地を400万円で購入した差額の600万円を父から贈与を受けたとして、差額の600万円が贈与税の対象となります。

ただし、資力を喪失して、当該債務(租税公課を含む)の弁済が困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、対象となりません。

 ※この際の贈与税の計算に使われる価額は時価であって、相続税(贈与税)評価額ではありません。
 ※土地の名義変更にあたり、登録免許税や不動産取得税などの流通税も対象となります。

 ※このケースでの著しく低い金額とは、個々の具体的事案に基づき判断を要します。法人に対する低額譲渡(時価の2分の1未満)の規定とは異なりますのでご注意ください。

個人から同族法人への低額譲受の場合

例)父Aが所有の時価1,000万円の土地を同族法人Cに400万円で譲渡した場合

①父Aの課税
 実際に譲渡した400万円ではなく時価1,000万円で譲渡したとみなして、キャピタルゲインが生じる場合には譲渡所得の確定申告が必要になります。

 ※法人に対して、時価の2分の1未満の金額で譲渡した場合には、時価で譲渡したとみなされて課税されます。
 しかし、同族法人に対しては時価の2分の1以上の金額で譲渡した場合でも不当に税額を減少させるなどの行為が同族法人の行為計算否認規定(所得税法157条)に該当する場合には、時価で譲渡したものとみなして課税されます。
▼詳しくはこちら(所得税法基本通達59-3)を確認ください。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/12/02.htm

 
②同族法人Cの課税
 時価1,000万円から実際の購入金額400万円の差額600万円は、同族法人Cの益金(営業外収益)に算入しないといけません。

③同族法人Cの株価が上昇した場合
 上記②に基づいて利益が増加し、同族法人Cの株価が上昇した場合、同族法人Cの株式を保有している個人は株価が値上がりした部分を父Aから贈与を受けたとみなし、贈与税の対象となります。

<計算方法の例>
1万株(1株あたり1,000円)を発行している同族法人Cに父Aが所有の時価1,000万円の土地を400万円で低額譲受(贈与も同じ)した場合、同族法人Cの1株当たりの株価が2,000円(1,000円上昇)となった場合には、
3,000株を保有している子Bは1,000円(上昇分)×3,000株=300万円を父Aから贈与を受けたことになります。

同族法人から個人への低額譲受の場合

例)同族法人Cが所有する時価1,000万円の土地を子Bに400万円で譲渡した場合

①子Bの課税
 子Bが同族法人Cの役員や従業員である場合には、時価1,000万円と実際の購入額400万円との差額600万円は給与として、給与所得(所得税)の対象となります。

 また、差額600万円は源泉徴収の対象となります。

 ※子Bが同族法人Cの役員や従業員ではない場合には、差額600万円は一時所得として所得税の対象となります。

②同族法人Cの課税

 子Bが同族法人Cの役員や従業員である場合には、時価1,000万円と実際の購入額400万円の差額600万円は給与として、役員であれば定期同額給与ではないため「損金不算入」、従業員であれば「損金算入」となります。

 ※子Bが同族法人Cの役員や従業員ではない場合には、差額の600万円は寄付金として処理することとなります。

法人から法人への低額譲受の場合

例)同族法人Cが所有する時価1,000万円の土地を同族法人Dに400万円で譲渡した場合

①同族法人Cの課税
 時価1,000万円と実際の購入金額400万円の差額600万円は寄付金として取り扱います。

②同族法人Dの課税
 差額600万円については、益金(営業外収益)に算入しなければなりません。

※同族法人Cと同族法人Dがグループ法人税制の適用があると態様が異なりますので、詳細は税理士法人アーリークロスまでお問い合わせください。
 

おわりに

 いかがでしたか?この記事では、親族間や自身が代表取締役を務める同族法人などへの著しく低い金額で財産を譲り受けた場合の課税についてご説明いたしました。

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