目次
はじめに
1.贈与税の根本的な改変が数年前から示唆されていました。本年度の政府税制調査会で検討が重ねられ、今回与党が提示した政府税制改正大綱によりその内容が明らかになりました。
2.今後、閣議に提出、決定された税制改正の大綱に沿い国税は財務省が改正法案を作成することとなっており、その後国会に提出されます。
3.記事の要約
この記事では本記事作成日時点において判明している与党税制調査会がとりまとめた与党税制改正大綱の内容についてご説明すると同時に、今後変わっていく相続対策について私見を述べたいと思います。
4.読了後に得られること
この記事を読み終えると既に相続対策で贈与を実施されている方も、そうでない方も、税予測にご活用頂けるようになります
相続時精算課税制度が使いやすくなる?
こちらの詳細はコラム「R5年度税制改正大綱資産税まとめ」にて掲載しておりますので、ご覧ください。
生前贈与が相続税に持ち戻される期間が長くなる?
現行法:相続開始前3年以内の贈与が相続税に持戻し
改正案:相続開始前7年以内の贈与が相続税に持戻し
7年前の贈与は申告するときにどうやって把握するの?
税務署へ開示請求
相続税の申告や更正の請求をしようとする人が、他の相続人等が被相続人から受けた
①相続開始前3年以内の贈与
又は
②相続時精算課税制度適用分の贈与に係る贈与税
の課税価格の合計額を把握しようとするときに、税務署に対して過去提出されている申告書の開示を請求することができます。
現在は3年間ですが、おそらく7年間に拡充されるものと思われます。
過去の贈与契約書を探す
金庫や公証役場(公正証書にしていれば)に保管されている贈与契約書を確認します。
通帳や証券口座等のお金の移動をもとに思い出す
口座間移動を見れば、贈与契約書を作成していない贈与も把握することが可能です。
これをもとに思い出していただくことが可能です。
遺留分の侵害額請求にも影響?
遺留分とは
相続人が相続で財産を取得する上で、最低限相続できる権利です。
現在の民法では、遺留分を請求する際はお金で請求することになります。
換金化できない「自社株式」をもらった後継者が払う遺留分
会社社長が持つ株式にも評価額が付され、遺留分計算をするときの対象となります。
相続対策をしていない場合、株式を取得した後継者は、他の相続人に比べて多く財産を取得したとされ、遺留分相当の請求を求められることがしばしばあります。
相続税申告書が遺留分侵害額の計算に活用される可能性
贈与も過去10年以内(※遺留分の侵害を知って行った贈与はそれ以上)のものは、相続時の遺留分計算に持戻されます。
たとえば、相続税申告のときに過去3年以内だけ加算すればよかったところ、7年になりますので、それだけ生前の贈与が明らかにされます。
したがって、遺留分侵害をしていることが他の相続人にもわかりやすくなったといえます。
会社後継者は遺留分対策をより求められる
今後の相続税申告は
「相続税申告のために財産集計をしていたところ、どうやら兄弟は多額の贈与を過去7年内に受けていたことが判明した」
という状態が当然になってきます。
つまり、より円滑な相続を目指すための取り組みが必須となります。例えば、遺留分相当額をちゃんと支払えるように会社を使って備えておく等は当然にしておかないといけないでしょう。
こっそり改正が入っている「株式交付」制度も重要な改正論点
相続・事業承継対策において株式交付が活用されていたのをご存知でしょうか?
この制度は意外と知られておらず、しかし対策においては様々な局面で大いに活用することができました。
具体的な内容は割愛しますが、相続・事業承継対策を実行する過程において、通常保有する株式に譲渡益課税が課せられるべきところ、これを繰り延べることができる便利な制度でした。
しかし、令和5年10月からは、この制度の本来の趣旨である戦略的なM&A局面等における活用に限定するために、上記のような活用ができないように塞がれています。
筆者はこの改正について「非同族の同族会社」の定義等、しっかりと把握して相続事業承継対策にまだ活用できる余地がないかを模索したいと考えています。
株式等を対価とする株式の譲渡に係る所得の計算の特例について、対象から株式交付後に株式交付親会社が同族会社(非同族の同族会社を除く。)に該当する場合を除外する(所得税についても同様とする。)。 (与党税制改正大綱一部抜粋)
おわりに
いかがでしたか?この記事では
・ 生前贈与7年分が相続税に持戻される?
・ 遺留分の侵害額請求にも影響?
・ こっそり改正が入っている「株式交付」制度も重要な改正論点
についてご説明いたしました。
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