2022.12.21

R5年度税制改正大綱資産税まとめ

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに

2022年12月16日にR5年度の税制改正大綱が自民党ホームページに掲載されました。
※自民党ホームページ
https://www.jimin.jp/news/information/204848.html

この記事では主に資産税に関わる改正のものを税制改正大綱から読み取れる範囲で記載していきたいと思います。

  • 相続時精算課税の使い勝手の向上
  • 暦年課税における相続前贈与の加算
  • 贈与税の非課税措置
  • マンションの評価方法の見直し

基本的な考え方

資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築

※抜粋
高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、いわゆる「老老相続」
が増加するなど、若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。高齢世代が
保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することとなれば、その
有効活用を通じた経済の活性化が期待される。
一方、相続税・贈与税は、税制が資産の再分配機能を果たす上で重要な役割
を担っている。高齢世代の資産が、適切な負担を伴うことなく世代を超えて引
き継がれることとなれば、格差の固定化につながりかねない。
わが国の贈与税は、相続税の累進負担の回避を防止する観点から、相続税よ
りも高い税率構造となっている。実際、相続税がかからない者や、相続税がか
かる者であってもその多くの者にとっては、贈与税の税率の方が高いため、生
前にまとまった財産を贈与しにくい。他方、相続税がかかる者の中でも相続財
産の多いごく一部の者にとっては、財産を生前に分割して贈与する場合、相続
税よりも低い税率が適用される。
このため、資産の再分配機能の確保を図りつつ、資産の早期の世代間移転を
促進する観点から、生前贈与でも相続でもニーズに即した資産移転が行われる
よう、諸外国の制度も参考にしつつ、資産移転の時期の選択により中立的な税
制を構築していく必要がある。

相続時精算課税の使い勝手の向上

現行

現行の相続時精算課税制度は一度制度を選択した場合は必ず贈与の都度、申告をする必要があります。
また、相続時精算課税制度により贈与した財産は贈与した時の金額で被相続人の相続財産に含めて相続税を計算します。

改正案

相続時精算課税制度の基礎控除を創設。
具体的には暦年贈与課税の110万円とは別枠で相続時精算課税制度についても毎年110万円の基礎控除を創設
これにより相続時精算課税制度を選択していても110万円以内でしたら暦年贈与と同様に申告不要となりました。
また、相続時精算課税制度により贈与した財産は贈与をした被相続人の財産に含めることになりますが、毎年の110万円を控除した金額を相続財産に含めることになりました

改正時期

R6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税、贈与税に適用されます。

暦年課税における相続前贈与の加算

現行

現行制度では相続開始前3年以内に相続人が受けた生前贈与については、贈与をした被相続人の相続財産に加算されることになります。

改正案

相続開始前7年以内に相続人が受けた生前贈与について、被相続人の相続財産に加算されることになりました。
しかし、事務負担の軽減する目的により延長された4年間のうちに受けた贈与については100万円を控除した財産を被相続人の財産に加算することになりました。
例えば、
相続開始前3年以内の贈与財産:300万 
相続開始前3年超7年以内の贈与財産:400万
のケースだと
300万+400万円‐100万円=合計600万円
が相続財産に加算されることになります。

改正時期

R6年1月1日以後に贈与により取得する財産にかかわる相続税について適用されます。

贈与税の非課税措置の延長

教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与

追加措置①

信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死
亡した場合において、被相続人の財産総額が5億円を超えるときは、受贈者が 23 歳未満である場合等であっても、その死亡の日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額を、当該受贈者が当該贈与者から相続等により取得したものとみなすとされました。
※令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る相続税について適用。

追加措置②

受贈者が 30 歳に達した場合等において、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額に贈与税が課されるときは、一般税率を適用することとなりました。
※令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税について適用。

延長期間

現行のR5年3月31日から3年間延長となりました。

マンションの相続税評価

現行

財産評価基本通達により評価したマンションの評価額は、市場価格と大きく乖離しているケース見られます。
令和4年4月19日に出た最高裁判決でもこの評価額と市場価格との乖離による相続税の削減が問題となっていました。

検討案

具体的な改正案は出ていません。
来年度以降に持ち越しのようです。

おわりに

本記事ではR5年税制改正大綱のうち資産税にかかわるものをピックアップして解説しました。
特に相続時精算課税制度の改正と生前贈与加算の7年への拡充は実務的にインパクトありそうです。
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