目次
1.はじめに
相続税の申告期限までに遺産分割協議が終わりそうにない…とお悩みではありませんか?
今回のコラムでは、
相続税の申告期限までに遺産分割協議が終わらなかった場合の相続税の申告の仕方
についてご説明いたします。
今回のコラムを読み終えると、遺産分割協議が終わっていない場合でも、慌てずに相続税の申告ができるようになります。
2.遺産分割協議が終わっていない場合の相続税申告の仕方は?
相続税の申告期限までに遺産分割協議が終わっていない場合には、いったん、法定相続分で遺産を相続したものとして、相続税の申告書を作成し、申告期限までに申告(以後、「未分割申告」と呼びます)と納税を行います。
その後、遺産分割協議が終わり、無事に分割内容が決定したら、4か月以内に、改めて分割協議の内容にそって適正な申告を行います(※1)。
その結果特例の適用を受けたあとの適正な税額で還付(又は納付)を行うことになります。
※1:更正の請求(還付の場合)又は修正申告(納付の場合)といいます。
3.「申告期限後3年以内の分割見込書」を忘れずに添付しましょう
当初の未分割申告を行う際には「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を忘れずに添付するようにしましょう。
この書類は、遺産分割が終わっていない場合には受けられない、以下の①~④の優遇特例を、相続税申告書の提出期限から3年以内に遺産分割し再申告する場合に受けられるようにする届出書です。
①配偶者の税額軽減
配偶者が相続した財産が、次のどちらか大きい金額までは、相続税がかからないという制度です。
・1億6千万円まで
・法定相続分まで
②小規模宅地等の特例
自宅や事業用の宅地のうち一定の面積までの部分について、相続税の課税価格を最大80%まで減額できる制度です。
③特定計画山林の特例
特定計画山林を引き継ぐ場合に相続税の課税価格を5%減額できる制度です。
④特定事業用資産の特例
平成21年3月31日以前に相続時精算課税に係る贈与によって取得した特定受贈同族会社株式等で、この特例の適用を受ける選択をしたものについて、一定の要件を満たすと、相続税の課税価格を10%減額できる制度です。
なお、「申告期限後3年以内の分割見込書」について、さらに詳しく知りたい方は、国税庁のHPをご覧ください。
▼国税庁HP「相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/2327.htm
4.注意点は?
後から還付してもらえるなら、急いで遺産分割協議を終わらせる必要はないのでは? と思われるかもしれませんが、注意点もあります。
(1)未分割申告では税額が高くなる可能性
上記「3.「申告期限後3年以内の分割見込書」を忘れずに添付しましょう」でもご説明した通り、当初の未分割申告では、優遇特例の適用ができませんので、思ったより税額が高くなる可能性があります。
遺産分割協議が終わった後、更正の請求をすれば税金が還付されるとはいえ、当初の未分割申告時には特例を適用していない状態で計算した相続税の金額を納付する必要があり、納税用の資金の準備が必要となります。
(2)3年以内に分割協議が終わらなかった場合
万が一、3年以内に遺産分割協議が終わらなかった場合は、2か月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、再申告の期限を延長してもらう必要があります。
ただし、この申請書を提出したからと言って、必ずしも申請が通るとは限らないので、可能な限り3年以内に更正の請求を行うようにしてください。
「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」について、さらに詳しく知りたい方は、国税庁のHPをご覧ください。
▼国税庁HP「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/1585-01.htm
(3)その後、遺産分割協議が成立しても適用を受けることができない規定
申告期限内に協議がまとまっていなくても、上記の通り適用を受けることができる優遇特例をご紹介しましたが、下記の規定(主に納税猶予及び免除規定)は申告期限内の遺産分割協議(又は遺贈による取得)が要件とされており、いわゆる未分割申告を行うと以後も適用を受けることができませんのでご注意ください。
これらの特例を適用したい場合には必ず生前の対策もセットで行い、遺言書の作成をしておく等が肝要となります。
- 農地等についての相続税の納税猶予及び免除等(措法70の6⑤)
- 山林についての相続税の納税猶予及び免除(措法70の6の6⑧)
- 特定の美術品についての相続税の納税猶予及び免除(措法70の6の7⑦)
- 個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除(措法70の6の10⑦)
- 非上場株式等についての相続税納税猶予及び免除(措法70の7の2⑦)
- 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例(措法70の7の6⑤)
- 医療法人の持分についての相続税の納税猶予及び免除(措法70の7の12④)
5.おわりに
いかがでしたか?今回のコラムでは、
相続税の申告期限までに遺産分割協議が終わらなかった場合の相続税の申告の仕方
についてご説明いたしました。
もしご自身での相続税申告が難しいと感じられた場合には、お気軽に福岡相続テラス(税理士法人アーリークロス)にお問い合わせください。
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