2023.05.20

AIと相続

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに


最近はChatGPT等の身近に利用できるAIが登場してきました。

これらの画期的な技術が今後、どのように相続の申告や手続きの場面で活かせると予想されているかをご紹介します。

ChatGPTとは

概要

ChatGPTは対話をしながら、情報を投げ返してくれるAIです。

正確には

「OpenAIが訓練した大規模な言語モデルです。GPT-3.5アーキテクチャに基づいています。ChatGPTは、自然言語処理や会話システムなどの様々なタスクに利用されます。ChatGPTは、最新のAI技術を使用しており、高度な言語処理能力を備えています。あなたの質問や会話に答えることができるため、ChatGPTは、あなたの知識を広げるための貴重なリソースとなります。」(ChatGPT4.0の解説)

何が得意か

文章や会話の理解、そこから導かれる適切な回答の提示が得意です。

例えば(以下、ChatGPTより引用)

  • 質問応答システムの構築
  • 自然言語生成
  • 文書要約
  • 意味解析や固有表現認識
  • 言語翻訳や会話翻訳

こういった処理に長けたAIです。

遺言書の文案作成

本稿作成時点のChatGPT4.0に遺言書の文案を作成してみてもらいました

(以下、ChatGPTより引用)

遺言書

本書は、私、[あなたの名前]が自らの遺言に関する意思表示を記したものである。

本日、2023年4月21日に作成する。

私の財産金額は2億円である。法定相続人は、母親である[母親の名前]と、私の2名の子どもである[子ども1の名前]と[子ども2の名前]である。

私の遺言により、次のように財産を分配することを望む。

母親である[母親の名前]には、私の財産の70%を相続させる。
子どもである[子ども1の名前]には、私の財産の15%を相続させる。
子どもである[子ども2の名前]には、私の財産の15%を相続させる。
以上が私の遺言である。

この文案を参考に、遺言書を作成してください。作成後、自筆証書遺言の場合は、遺言者であるあなたが全文を手書きし、署名および押印を行ってください。また、遺言書の保管場所を信頼できる人に伝えておくことをお勧めします。遺言書の作成に関する法律や手続きについては、専門家に相談することをお勧めします。

あくまで遺志を固める壁当て

ある程度指標になる文案が作成されました。

一般的な遺言書の形式からは少々ずれがありますが、それでも対話を通して作成するため、ご自身の遺志を固めるいわゆるキャッチボール相手としては良いかもしれませんね。

相続手続き

相続手続きの委任状の作成をChatGPTにお願いしてみました

続いてChatGPTに一般的な委任状の作成を指示してみました。

相続人が忙しいので代わりに別の人が対応するケースを想定して指示をだしてみました。

(ChatGPTより引用)

以下が相続手続きにおいて、どこでも使える一般的な委任状の文案です。なお、◯◯の箇所には、委任者と受任者の氏名、住所、年月日などを記入してください。

<委任状の文面>

委任状
私、◯◯(委任者の氏名・住所)は、相続に関する一切の手続きについて、以下の通りに受任者を代理人として委任することをここに宣言します。

受任者:
氏名:◯◯
住所:◯◯
年月日:◯◯

受任者には、相続に関する以下の業務を委任します。
(1)相続人の代理人として、相続手続きに必要な書類を提出すること。
(2)相続人の代理人として、必要な手続きを行うこと。
(3)その他、相続に関する一切の業務を行うこと。

以上、私が受任者に委任することとし、私は受任者が行った一切の行為について責任を負います。
年月日:◯◯
委任者:
氏名:◯◯
住所:◯◯

それっぽいですがまだまだ使えない

上記の文案は、例えば相続手続きでは欠かせない

・原本の還付請求や受領に関する権限

・復代理人選任に関する権限

等の一般的な記載がなされていません。

原本の還付請求が行われるかどうかは、相続手続きであらゆる場所へ原本を持っていく代理人にとってはとても重要な事項です。

だいたいの場所ではこの委任状でも対応してくれるかもしれませんが、金融機関等では厳重に相続手続きを取り扱うため、この委任状では不測の事態になりそうです。

とはいえほんの数秒でこれだけの文案を作成してくれるだけでもすごいと思います。

ChatGPTへの指示の出し方次第ではもっと良いものが作成されそうです。

相続税の試算

財産1億円、配偶者あり、子3名、法定相続分で取得

(ChatGPTより引用)

日本の相続税制度に基づいて、財産1億円、子3名、配偶者1名の場合の納付税額を試算します。法定相続分で財産を取得するということを考慮して計算を行います。

まず、法定相続分に基づいて財産の分配を行います。
配偶者:1/2
各子(3名):残りの1/2を3等分

財産1億円をこの割合で分配します。
配偶者:1億円 × 1/2 = 5,000万円
各子(3名):1億円 × 1/2 ÷ 3 = 1,666.67万円(小数点以下切り捨て)

次に、各相続人の基礎控除額を考慮します。2021年時点の基礎控除額は、配偶者が5000万円、子供が1000万円です。

配偶者の課税対象額:5,000万円 – 5,000万円 = 0円
各子の課税対象額:1,666.67万円 – 1,000万円 = 666.67万円

各子の課税対象額に対して、相続税の税率を適用します。2021年時点の税率は、以下の通りです。

・600万円以下:10%
・600万円超 – 1,200万円以下:15%

子の課税対象額666.67万円は、600万円超 – 1,200万円以下の範囲にあるため、税率15%を適用します。

各子の相続税額:666.67万円 × 15% = 100万円

3名の子がいるため、合計の相続税額は以下の通りです。

合計相続税額:100万円 × 3 = 300万円

以上の試算により、財産1億円、子3名、配偶者1名の場合の法定相続分での納付相続税額は300万円です。ただし、これは2021年時点の制度に基づいて計算しており、税制改正や税率変更などがあった場合は異なる結果となります。具体的な詳細については、専門家にご相談いただくことをお勧めします。

所感

誤っているところが下記の通り多く正解からは到底遠い状態となっていますが、算式を使いつつわかりやすい説明をしてくれようとしていますね。

細かい部分を学習すれば、非常に使い勝手が良くなりそうです。

・法定相続分・・・正解
・基礎控除・・・不正解
・配偶者の課税対象額?・・・おそらく配偶者の「税額」軽減のことだと思います。これは算出税額以下で計算するため、課税対象(課税価格のことでしょうか)の段階ではそのような配偶者の特例は相続税法及び租税特別措置法にはありません。
・相続税の税率・・・不正解

今後、精度が向上し、正解が導き出されるようになれば、相続税対策を行う際の強力な助っ人になるかもしれません。

おわりに

いかがでしたか?

この記事ではAIと相続について、具体的にChatGPTを試してみた結果について解説いたしました。

まだまだAIは精度がよいものではありませんが、今後相続のことを考えるときにAIのチカラを借りる時代がくるのはそう遠くないかもしれないと感じました。

少なくともしばらくは相続に関するご相談は専門家にしたほうがよいことは間違いないようです。

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