2020.12.18

相続時精算課税制度とは?

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに

相続税対策の一つとして「生前贈与」が活用されるケースがあります。相続税は遺産の金額が大きくなるにつれて税率も高くなります。対策の基本としては、遺産の金額を減らすことです。

生前贈与には「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」があります。特に相続時精算課税制度は、「2,500万円までは非課税で生前贈与できる」と紹介されることが多く、生前対策として有効な印象を受けますが要件等が複雑で活用することが難しい制度です。今回、相続時精算課税制度の内容、メリット・デメリットについて紹介致します。

相続時精算課税制度とは?

概要

相続時精算課税制度には2,500万円の特別控除があります。一定の要件を満たす同一の父母又は祖父母からの贈与については2,500万円に達するまでは贈与税はかかりません。 2,500万円を超えた場合には、超えた金額の20%の贈与税がかかります。

ただし、相続時精算課税制度を利用すると「贈与者の相続が発生した際に、被相続人の相続財産に相続時精算課税により贈与された財産も加算される」という点に注意が必要となります。

相続時精算課税は相続が発生した時に生前贈与を精算するための制度であります。

相続時精算課税制度による贈与は相続の前倒しによるものとして取り扱われますが、相続時精算課税を利用してしまうと、相続放棄が出来なくなるのではないかと思われる方が多くいらっしゃいます。

しかし、相続時精算課税による財産は「相続税法」の相続財産でありますが、民法上の「放棄の対象となる相続財産」ではないため、相続時精算課税を利用しても相続放棄は可能であります。

また、相続時精算課税制度を利用するためには必ず申告が必要となり、戸籍謄本等の添付書類も合わせて税務署へ提出が必要です。申告や添付書類を忘れてしまうと、暦年贈与での計算となるため場合によっては多額の贈与税が課税される可能性があります。

相続時精算課税制度の要件

  • ① 60歳以上の贈与者(父母又は祖父母)から
  • ② 贈与者の推定相続人(例:子、20歳以上の直系卑属に限る。)又は20歳(注)以上の孫への贈与

(注)令和4年4月1日以後の贈与により財産を取得した場合は18歳

※年齢の判定は贈与を行った年、受けた年の1月1日で判定

相続時精算課税制度による計算方法

  • (贈与額-特別控除)×税率=贈与税

特別控除

次のいずれか低い金額となります。

  • ① 2,500万円(限度額2,500万円であるため、前年以前に贈与があった場合には前年以前の贈与額を控除した残額)
  • ② 特定の贈与者ごとの贈与金額

税率

  • 20%(贈与する金額が大きくなっても変わりません。)

住宅取得等資金に係る贈与の特例

住宅取得等資金の贈与を受けた場合には、贈与者が贈与を行った年の1月1日において60歳未満であっても相続時精算課税制度を利用することができます。

暦年贈与と相続時精算課税制度を比較

暦年贈与相続時精算課税制度
計算
方法
(贈与額-110万円)×累進税率(贈与額-2,500万円※)×20%

※2,500万円を限度
(前年以前の贈与については
控除している場合には
控除した残額)
要件どなたにでも
可能
60歳以上の父母・祖父母から
20歳以上の子・孫への贈与
相続税との関係相続税と切り離して計算※

※相続開始前3年以内の贈与は
相続税の課税対象
相続税の計算上、贈与財産は加算※

※相続時の精算時における財産の評価は贈与時の評価額
制度の移行暦年贈与から相続時精算課税への移行は可能相続時精算課税制度を選択した場合には
暦年贈与への移行は不可

相続時精算課税制度によるメリット・デメリット

メリット

① 特別控除までは贈与税の課税はない

例えば相続税を試算して、相続税の基礎控除以下となる場合には相続時に贈与を加算しても相続税の課税はありません。贈与税の負担もなく、子や孫へ渡すことができます。

② 早めに大きな財産を渡すことが可能

例えば、収益物件などの大きな財産(マンションなど)を相続時精算課税により子へ贈与すると、贈与後の家賃収入は子の収入となり、贈与者の収入ではないため相続税対策につながります。

③今後、価値が上がる財産を渡すことが可能

相続時精算課税制度は相続税の計算上、相続財産として加算の対象となります。加算対象となる金額は、相続時の時価ではなく、贈与時の時価となります。

例えば、相続が発生した際に有価証券の時価が1億円の場合、事前に相続時精算課税制度により有価証券の時価が1,000万円の時に贈与した場合には、相続税の加算対象となる財産は1,000万円となります。

デメリット

①暦年贈与へ変更は不可

相続時精算課税制度を選択してしまうと暦年贈与に戻ることは出来なくなります。

例えば、相続時精算課税制度を選択した後に100万円贈与した場合には暦年贈与の基礎控除を使用することが出来なくなります。

②贈与税の申告・添付書類の必要となる

贈与を受けた財産については金額の大小にかかわらず、贈与税の申告期限内に相続時精算課税選択届出書と合わせて戸籍謄本等の添付書類が必要となり、申告の手間が増えます。

③小規模宅地等の評価減との併用不可

④生前贈与による財産は物納不可

⑤贈与税以外の税負担がかかる

例えば、土地建物などの不動産を生前に贈与した場合には登録免許税、不動産取得税がかかります。また、司法書士報酬等が必要となる可能性もあります。

まとめ

本記事では相続時精算課税制度について解説しました。

相続時精算課税制度については、「2,500万円までは非課税で生前贈与できる」制度であり、まとまった財産をご子息・ご息女へ渡す際には有効な制度であります。

しかし、デメリットの部分もあるため必ずしも節税に繋がらないケースもあります。一度専門家へ相談することをオススメします。

福岡相続テラス(税理士法人アーリークロス)では相続に関する無料相談を行っておりますので、お気軽にご連絡ください。

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