目次
はじめに
国外転出時課税制度をご存知ですか?
平成27年度税制改正において創設された制度で、時価1億円以上の株式等を所有している方が国外へ転出する場合には、国外へ転出する時に株式等の譲渡等があったものとみなして所得税を課税するというものです。
この制度は、自身が国外へ転出する時だけでなく、相続や贈与の場面でも適用される場合があります。
この記事では、相続や贈与の場面での国外転出時課税制度についてご紹介いたします。
概要
<相続の場合>
時価1億円以上の株式等を保有している居住者が亡くなり、その株式等を海外に住む非居住者である相続人等が相続した場合には、被相続人が相続開始時に時価で売却したものとして、被相続人に所得税が課されます。
<贈与の場合>
時価1億円以上の株式等を保有している居住者が、その株式等を海外に住む非居住者である親族等に贈与した場合には、贈与者が贈与時に時価で売却したものとして、贈与者に所得税が課されます。
※1億円の判定は、相続or贈与で受け取った財産のみの金額で判定ではなく、全ての対象資産の合計額で判定されます。
対象となる方
次の①と②のいずれにも該当する方
①相続開始時or贈与時において、時価の合計額が1億円以上である対象資産を保有している
②相続開始前or贈与の日前10年以内において、国内に5年を超えて住所または居所を有している
対象となる資産
- 株式、投資信託などの有価証券(内国法人や外国法人、上場、非上場を問わない)
- 匿名組合契約の出資持分
- 未決済の信用取引や未決済の発行日取引
- 未決済のデリバティブ取引
申告期限
<相続の場合>
相続開始から4か月以内です。
<贈与の場合>
贈与した年の翌年の3月15日です。
課税の取消し
相続開始日or贈与日から5年(納税猶予の延長をした場合は10年)以内に、次に該当する場合には、課税の取消しが可能です。
- 対象となる資産を取得した相続人等or受贈者が全員帰国した場合で、対象となる資産を帰国の時まで引き続き保有している
- 対象となる資産を取得した相続人等or受贈者が、その対象となる資産を居住者に贈与した場合
- 対象となる資産を取得した相続人等or受贈者が死亡し、その対象となる資産を相続等により取得した人すべてが居住者となった場合
※課税の取消しをするためには、帰国日や贈与などの発生日から4か月以内に更生の請求の手続きが必要となります。
納税猶予
相続開始日or贈与日から5年(納税猶予の延長をした場合は10年)を経過する日まで納税が猶予される手続きがあります。
<相続の場合>
- 所得税(準確定申告)の申告期限までに、非居住者である相続人全員が納税管理人の届出をすること
- 所得税の準確定申告書に納税猶予の適用を受ける旨を記載して、一定の書類を添付すること
- 所得税(準確定申告)の申告期限までに、納税猶予される所得税及び利子税額に相当する担保を提供すること
<贈与の場合>
- 所得税の確定申告書に納税猶予の適用を受ける旨を記載して、一定の書類を添付すること
- 所得税の確定申告期限までに、納税猶予される所得税及び利子税額に相当する担保を提供すること
※納税猶予期間中は、毎年、3月15日までに「継続適用届出書」の提出が必要となります。
おわりに
いかがでしたか?この記事では相続や贈与の場面での国外転出時課税制度についてご紹介いたしました。
海外に親族の方がお住まいの場合などは、この国外転出時課税制度の対象となるかもしれません。
様々な手続きや注意点がありますので、事前に専門家に相談することをおすすめします。
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