2023.08.07

贈与契約取り消し時の贈与税の注意点

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに

 「財産の贈与を受けて不要だなと思い、前所有者に戻したい」、「贈与した財産を返してほしい」と悩まれていませんか?

 しかし、ある一定の要件に該当したときには、前所有者に財産を戻したとしても一度贈与を受けたことに対して贈与税が課税されるケースがあります。

 この記事では、前所有者に財産を戻した場合の贈与税が課税されない場合課税される場合のポイントについてご紹介します。 

 この記事は、国税庁HP(相続税個別通達)を参考にしております。

 ▼名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて
 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/640523/01.htm
 ▼「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」通達の運用について
 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/640704/01.htm

贈与税が課税されない場合①

 まず初めに、贈与契約は一般的に財産をあげる側が「この財産をあなたにあげるよ」と意思表示を行い、財産をもらう側が「その財産貰うよ」と意思表示をすれば贈与が成立します。

 また、贈与契約は当事者の意思表示の合意で成立するため、親族間での贈与は口頭での意思表示の贈与が多い印象があります。

贈与を受けた者が贈与の事実を知らない場合

 よくある事例として、父母が所有している自宅の土地や建物の名義を同居している子に変えているケースがあります。

 この場合、贈与を受けた子は「贈与を受けた事実」を知らず、固定資産税や不動産取得税の納税通知書が送られてきて贈与の事実を知ったり、税務署からの連絡を受けて贈与の事実を知った方は少なくないと思います。

 そのため、財産に名義が必要な土地・建物・動産・有価証券などについては、「名義人(贈与を受けた者)が贈与の事実を知らない」かつ「名義人(贈与を受けた者)が財産の管理運用を行っておらず、その利益を受取っていない」場合には贈与税の課税はされません

 なお、当然ですが、名義を贈与税の最初の申告若しくは決定又は更正前に真正な者へ戻していることが前提ですのでご留意ください。

 しかし、上記の内容を「熟知」してかつ「贈与税の課税逃れを目的」としている判断される場合は、課税となる可能性がありますのでご注意ください。

贈与税が課税されない場合②

法定取消権等よる取消し又は解除

 「贈与契約が法定取消権又は法定解除権に基づいて取消し又は解除された旨の申出があった場合に、その取消し又は解除されたことが当該贈与に係る財産の名義を前所有者に変更したことその他により確認された場合に限り、その贈与はなかったものとして取り扱う。」とされていますがどのような場合でしょうか?

 次のような事例が該当するとされています。

詐偽又は強迫による取消権の規定に基づくものについては、詐偽又は強迫をした者について公訴の提起がされたこと、又はその者の性状、社会上の風評等から詐偽又は強迫の事実が認められること。

夫婦間の契約取消権の規定に基づくものについては、その取消権を行使した者及びその配偶者の経済力その他の状況からみて取消権の行使が贈与税の回避のみを目的として行われたと認められないこと。

・未成年者の行為の取消権、履行遅滞による解除権その他の法定取消権又は法定解除権に基づくものについては、その行為、行為者、事実関係の状況等からみて取消権又は解除権の行使が相当と認められること。
 
 と例示されています。

 詐欺や脅迫による名義変更、夫婦間の贈与は贈与税の回避目的ではないことの事実が(税務署から)認められると贈与税の申告をしていたとしても贈与契約の取消し、解除ができます。(認められなくても取消し、解除は可能ですが贈与税は課税されます。)

一度申告しても税金が戻ってくる

 上記による贈与契約の取消し又は解除である場合は、贈与税を申告した後でも法定申告期限から6年以内であれば税金を返す手続き(更正の請求)ができます。

贈与の取消し等をして課税される場合

当事者間の合意解除は要注意

 例えば、「贈与税の申告後、思いのほか贈与税額が高額であったことを理由に、当事者間の合意で贈与を無かったことにした場合」は贈与税が課税されます

 そのため、すぐに現金化しにくい土地、建物などの贈与は注意しないといけません!

 ※合意解除でも贈与税がかからない場合があります。

 法定申告期限かつ贈与税の申告に贈与を受けた財産を前所有者に戻した場合などは贈与税は課税されないとされております。詳しくは国税庁HPをご確認ください。

▼「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」通達の運用について
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/640704/01.htm

 また、国税庁の通達の目的は、「適正公平な観点から不慮の事故は仕方ないけど、贈与税の課税回避の目的は課税する。」ということが伺えます。

前所有者に財産を戻した場合

前所有者が返還を受けたときは贈与税は課税されない!

 贈与を受けた方が贈与税の課税がされるか否かに関わらず、前所有者に財産を戻した際は前所有者に贈与税は課税されません

おわりに

 いかがでしたか?この記事では贈与を受けた財産を前所有者に戻したときの贈与税の課税についてご説明いたしました。
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