2020.04.09

相続税対策のための生前贈与手法 4選

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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更新日:2020年4月9日

はじめに

生前贈与とは、生前に個人から個人に無償で財産を渡すことをいいます。

相続税対策についてセミナーに出席している方やご自身で勉強している方は、「生前贈与は相続税対策になる」ということを聞いた方も多いのではないでしょうか?

例えば、孫に贈与したら一世代飛ばして贈与することになるので効果が大きい、などです。

本記事では、相続税対策のための生前贈与の手法について4つの例示を上げながら解説していきたいと思います。

生前贈与を行うとなぜ相続税対策になる?

相続税は相続時に所有していた財産について税金をかけるものなので、先に贈与しておけばその分相続財産もすくなっているので相続税も安くなる、という理屈です。

しかし、次世代へ贈与をするときには贈与税がかかってきますので相続税の税率と贈与税の税率を見比べる必要があります。

(贈与税の基礎控除である毎年110万円までは贈与税はかかってきません)

相続税と贈与税は超過累進税率(※1) の仕組みをとっているので、仮に相続税の税率が50%だとすると、贈与税の税率が20%で済むとその差額の30%分次世代へ財産を移転するコストが安くなることになります。

※1 財産額が大きくなるほど税率が上がっていく仕組み

贈与税の基礎については、こちらの記事をご参照下さい。

生前贈与手法 4選

この章では、生前贈与をする際に効果的な手法と注意点を紹介していきます。

  1. 将来的に値上がりすると予測される財産を贈与する
  2. 高収益の賃貸不動産(建物部分のみ)を贈与する
  3. 相続税評価額が低いタイミングで贈与する
  4. 世代を飛ばしで孫に贈与する

将来的に値上がりすると予測される財産を贈与する

メリット

会社オーナーの方であれば自社の株式、地主の方であれば土地などの将来的な値上がりが予測されるものを贈与することで、相続財産の高騰を抑える事ができます。

注意すべきこと

注意点としては、遺留分の算定です。

仮に贈与時の価額が1万円だとして、相続時の価額が1,000万円だとすると遺留分の計算対象となるのは1,000万円となるので注意が必要です。

高収益の賃貸不動産(建物部分のみ)を贈与する

メリット

収益力の高い財産を手元においておくと、自然と相続財産を増やすことになります。

そのため、収益力のある不動産を次世代に移転することで相続財産の増加を抑えることができ、かつ、相続人の相続税の納税資金にあてることができます。

また、所得が高い方については、次世代へ収益力を移すことにより所得の分散の効果もあります。

注意すべきこと

注意点は、贈与後もその敷地が「貸家建付地」として評価されるのは賃借人に異動がない場合のみとなっています。

もし異動があった場合には、受贈者がその後の利用を意思決定できるものとされ、かつ地代の支払いがなければ、原則として使用貸借となり「自用地」としての評価になってしまいます。

「貸家建付地」は、「自用地」の評価額から借地権割合、借家権割合及び賃貸割合をかけた割合を減額したものなので、自用地に比べ貸家建付地の方が評価額は低くなります。

そこで、贈与後の賃借人の異動を防ぐために、贈与前に家族が主宰する不動産管理会社に一括して賃貸すれば、賃借人は異動しないので、相続が発生しても「貸家建付地」として評価できます。

相続税評価額が低いタイミングで贈与する

メリット

例えば上場株式の場合、経済状況の悪化時など株価が下がったときに贈与することで、相続財産を効果的に次世代へ移すことができます。

また、会社オーナーの方であれば、オーナーの退職金の支給など多額の支出があったときは株価が下がっているタイミングなので、そのタイミングで贈与を行うと効果的です。

世代を飛ばして孫に贈与する

メリット

贈与税には、相続税のように2割加算の適用はなく、一世代飛ばして祖父母世代から孫世代に一気に引き継ぐことで、一世代分の税金を抑えることができます。

例えば「教育資金贈与の非課税制度」を利用すれば、教育資金として1500万円まで一括贈与できます。

また、自宅の新築・取得または増改築等のための資金を贈与したとき、一定の要件を満たせば「住宅取得等資金の非課税の特例」が適用でき、住宅用家屋の取得等にかかる契約の締結日や省エネ等住宅か否かによって、定められた控除限度額まで贈与税がかかりません。

贈与税以外のコストも考慮し贈与する

例えば不動産の取引の際、贈与税以外にも、不動産取得税登録免許税印紙税などが課税されます。

この移転コストも考慮し、有利不利を判定していくことが必要です。

まとめ

このように相続税と贈与税の合計額を承継コストと捉え、対策を考え実行していくことが賢く生前贈与をおこなっていくために必要です。

少しでも多くの財産を子や孫の世代に残してあげるためにも、知識を基に将来を予測していくのがポイントとなります。

福岡相続テラス(税理士法人アーリークロス)では相続に関する無料相談を行っておりますので、お気軽にご連絡ください。

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