目次
はじめに
相続税を計算する際に誰かに貸しているお金など金銭債務は相続税の財産から差し引くことができます。
その際に問題となるのが「書面などの証拠が残っていない」金銭債務を差し引くことができるかどうかということです。
この記事では書面など証拠が残っていない債務について控除することができるかどうかの検証を行っていきたいと思います。
相続税法上の債務控除とは
相続税法13条第一項各号において、下記のものを相続税の計算上財産総額から差し引くこととされています。
・被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
・被相続人に係る葬式費用
つまり、実際に被相続人が負担すべきだったもの(金銭債務や未払の固定資産税や医療費)や葬儀費用については相続税の計算上控除することとなります。
相続開始の際現に存するとは?
現に存するとは現に債務が発生していることを意味します。
この場合、履行期(返済期限など)が到来しているか否かを問わないので、被相続人の贈与でまだ履行されていないもののような贈与の義務も含まれることになります。
債務と確実と認められるものとは?
相続税法14条においては債務として控除できるものは「控除すべき債務は、確実と認められるものに限る。」とされています。
ここでいう確実と認められるのものとは、債務の存在のみならず履行が確実と認めれる債務をいうものと解されています。
この場合、債務が確実であるかどうかについては、必ずしも書面の証拠があることを必要としていません(相基通14-1)
また、債務の金額が確定していなくても債務の存在が確実と認められるものについては、相続開始日において確実と認められる範囲の金額だけを控除するものとします。
なお、山口地裁昭和55年(行ウ)第4号事件判決は「確実な債務とは,社会生活関係上,営業継続上若しくは債権債務成立に至る経緯等に照らして事実的,道義的に履行が義務付けられているか,あるいは履行せざるを得ない蓋然性の表象のある債務をいう。」と判示しています。
借用書はあるが債務控除として認められなかった事例
前述のとおり債務控除については相続税法基本通達により必ず書面が必要かと言ったらそういうわけではございません。
しかし、もちろん書面があったとしてもその債務が確実か否か不明な場合は債務控除として認められなかった事例があります(平7.2.22裁決、裁決事例集No.49 393頁)。
https://www.kfs.go.jp/service/JP/49/22/index.html
※この事例では原本ではなく借用書のコピーの提出に留まっています。
この事例によると、
・ 借用書の原本を破棄しておりコピーの提出にとどまったこと、また、原本を破棄する明確な理由が見当たらない
・ 借用証書に債権者の住所,氏名等の主要事項が記載されていない等多くの疑問点及び不自然な点がある
・ 相続人は借入金の存在を知りながら遺産分割協議書に債務の計上がされていなかったこと
・ 借入時に預金通帳への入金も確認されなかったこと、かつ、仮に入金があったとしてそのお金が費消された事実がないこと
・ 借入後に被相続人は土地の売却代金が入金されているのにかかわらず、借入金の返済を行わず売却代金を定期預金に預けれ入れていたことは不合理である
などの理由から書面(コピーのみ)があったとしてもその借入金が債務として認められることはありませんでした。
検証とまとめ
この記事では借用書がない場合の債務控除ができるのかについて検証してみました。
上記の法令や裁決事例より以上より債務として認められるためには、
・ 借用書がない場合でもその債務が確実に存在するものは債務として認められる
・ 借用書がない場合は借入をした経緯、その後の返済の有無
・ 借入の動機
・ 遺産分割協議書に債務として計上されているか
あたりを抑えておく必要がありそうです。
通達に記載しているとおり債務は必ずしも書面が必要というわけではないと形式的に考えてしまうと上記の裁決事例のようなことにもなりかねませんので、債務控除をとる場合は事実関係を必ず確認するようにしましょう。
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