目次
はじめに
家族信託(民事信託)の有効性について、様々な場所で宣伝されておりその概要はよく目にしますが、税金についてはあまり見かけません。
税金は毎年関係してくるものですし、大きな支出ですので、しっかりと検討する必要があります。
この記事で紹介する、家族信託のよくある事例を前提にした税金をご覧いただければ、より家族信託についてご理解いただくことができます。
この記事では、各時点における家族信託の税金について、事例を交えつつご紹介いたします。
これから組成する家族信託について、税金も含めた資金計画を立てる際の検討要素になれば幸いです。
前提とする事例(自益信託)
賃貸不動産を所有している父Aさんは、将来ご自身に起こるかもしれない認知症対策として家族信託を導入しました。
内容は以下の通りです。
- ・委託者:父Aさん※
- ・受託者:子Bさん
- ・受益者:父Aさん※
- ・信託財産:収益不動産
- ※委託者と受益者が同じ信託のことを「自益信託」といいます。
信託設定時(家族信託をスタートしたときの税金)
贈与税
委託者が所有している資産が、法律上は受託者に所有権が移転します。ですが、税の世界では、その利益を受ける人(受益者)に対して財産が移転したものと考えます。
したがって、贈与税を考える必要はありません。
登録免許税
土地:評価額の0.3%
建物:評価額の0.4%
印紙税
信託行為に関する契約書 第12号文書 1通200円
※ただし、一定の場合は該当しません。
以上が、税金関係のおおまかな内容です。
なお、信託設定時には、受託者は信託財産の種類・所在場所・価額等を記載した調書及び合計表を翌月末日までに税務署へ提出しなければならないのでご注意ください。
信託期間中の税金
所得税の確定申告(消費税も同様)については、本ケースにおいては、信託組成前の状態と基本的に同じように行います。
ただし、以下が変わる点ですのでご注意ください。
確定申告時期
信託契約上の計算期間の終了日(決算日)が毎年3月末であったとしても、確定申告時期はいつも通りの時期に行う必要がありますのでご注意ください。
信託契約上の決算日は関係ありません。
損失は他の所得と損益通算できません
例えば不動産所得が赤字で、給与所得が黒字の場合、確定申告をすることで所得税の還付を受けることができます(給与をもらうときに天引きされた源泉税が還ってくるため)。
しかし、家族信託をする場合には、このような損益通算を行うことができなくなりますのでご注意ください。
甲物件、乙物件等それぞれ別々で信託をするとき
甲物件が赤字、乙物件が黒字であるとして、不動産所得を計算するときは甲物件の赤字と乙物件の黒字を通算することはできませんのでご注意ください。
甲物件を信託し、乙物件を信託しないとき
(3)のときと同様に、不動産所得内であっても損益通算することはできません。
(5)税務署へ提出する書類
信託をしている場合は、受託者(子Bさん)は、税務署へ毎年1月末までに一定の書類を提出する必要があります。
(6)固定資産税
固定資産税の通知は毎年受託者(子Bさん)に届くようになります。”
信託終了時(父Aさんが亡くなったとき)
“ 父Aさんが亡くなり、次の受益者が相続人へ引き継がれた際には、相続税が課税されます。
相続税を考えるときも、他の税と同様に、相続前に受益者であった人から相続又は遺贈により取得したものと考えます。
したがって、本ケースでは、父が信託をしていなかったものとして相続税の課税価格計算を行うとともに、信託において相続人が財産を取得するものとされているため、物件は相続人が取得するものとして計算します。主なポイントは以下のとおりです。
(1)小規模宅地等の特例
本事例では土地を他人に貸しており、その上に建物又は構築物がある場合には、「貸付事業用宅地等」の特例を検討することができます。適用できる場合にはたとえ信託財産であったとしても、限度面積までは50%(2021-11-30時点)の評価額の減額が可能です。
(2)債務控除
家族信託の契約内容によっては、債務控除が認められない債務も生じる場合があります。ポイントは実質的に父Aさん(委託者兼受益者)が負担する債務だということを評価できるかが大切です。契約書を作成する時点で、この点をしっかりと検討しておく必要があります。”
おわりに
“本記事では家族信託(民事信託)を始める前に、知るべき基礎的な税金のお話をしました。この記事により、家族信託を検討されている方の参考になれば幸いです。
思いもよらぬ相続税の負担を減額するためには相続専門の税理士に相談することをおすすめ致します。
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