小西公認会計士事務所コラムvol.7
【使ってない経費が必要経費と認められる特例-家内労働者等の必要経費の特例】
今日はあまり知られていない特例について解説したいと思います。今回は個人事業主の経費についてのお話になります。通常、個人事業主の事業所得は、収入から必要経費を差し引いて計算を行います。当然ながらこの必要経費に関しては実際に支払いを行うなど、実際に発生したものでなければいけません。ところが、実際には利用していない分も経費として認められる特例があります。それが「家内労働者等の必要経費の特例」と呼ばれるものになります。この特例は、実際にかかった経費が65万円未満であったとしても、65万円までは経費として認めてくれる制度です。使っていない金額を経費として認めてくれる特例なので、使わないと大変もったいない特例になります。
しかし、このようなウマい話なので当然適用要件があります。この特例が利用できるのは、「家内労働者等」のみになります。「家内労働者等」とは、法令によると「家内労働者等とは、家内労働法に規定する家内労働者や、外交員、集金人、電力量計の検針人のほか、特定の人に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする人をいいます。」とあります。まず、「家内労働法に規定する家内労働者」とは、簡単に言うと内職をやっている人になります。また、「特定の人に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする人」とありますので、内職や集金人のように「特定の人に」、「継続的に」、「人的役務」の提供を行うことを業務とする人であれば摘要できることになります。
注意点
ここでいう「特定の人に」というのは、特定されていれば複数でもOKです。逆に言うと、不特定多数の人にサービスを提供する場合には認められません。国税庁の相談事例では、学習塾経営や弁護士、税理士のように事務所等を開設し、不特定多数のために役務提供を業務とする人に関してはこの特例の対象外としています。結果的に特定の人にしか役務提供をしていなかったとしても、事務所等を開設して不特定多数の人に提供できる状態にあれば認められないと考えられます。また、国税庁の内部資料(誤りやすい事例集)では、自宅でピアノ教室を開業している人についてはこの特例の適用ができないとされています。広く生徒を募るようなピアノ教室については、不特定多数への役務提供が可能と考えられるためでしょう。しかし、一方で同じピアノ教室でもヤマハの講師については、適用ができるとされています。ヤマハ講師の場合には、ヤマハという特定の人に対してしか役務提供をしていないため特例の適用が認められるのです。見た目は一緒でも適用できる場合とできない場合があるので注意しましょう。
この制度の目的は、パート労働者との不均衡を解消することにあります。例えば、主婦がパートとして働いた場合には給与所得になり最低でも65万円の給与所得控除が受けられ、年収103万円以下であれば所得税がかかりません。しかし、内職で103万円を稼いだ場合、経費が65万円未満であれば所得税が課されることになります。この両者の不均衡を是正するためにできたのがこの特例となります。内職の場合でも、給与所得控除の最低額である65万円までは経費として保障しているのです。そのため、家内労働者等としての稼ぎ以外に給与所得がある場合には、65万円から給与収入をマイナスした金額が特例の適用上限となりますのでご注意ください。
なお、この特例は青色申告特別控除(65万円)との併用が可能です。要件を満たせば最大130万(65万+65万)までが控除されるということになりますので、小規模な事業者の方であれば結構インパクトがあるのではないかと思われます。また、この特例の適用をせずに過大に確定申告をしてしまった場合であっても、「更正の請求」という手続きによって、申告期限から5年以内’(平成22年分以前は1年)であれば還付を受けることができます。「更正の請求」については解説すると長くなりますので、税理士または税務署にご相談ください。
経費が65 万円に満たないような小規模な事業者の方の場合、顧問税理士がおらず、この特例の適用が見落とされていることがあると思います。損をしているケースがあるので注意しましょう。
最近朝晩は涼しくなってましたね。自分の誕生日が10月ということもあり、この季節は非常に好きです。ただ、こんなに涼しいのにクリーニングに行きそびれて今日は半袖で頑張ります(笑)。
公認会計士・税理士 小西
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